2024年09月18日

今年の能登杜氏講習会

9月4日のインスタグラムの投稿です。

割と長文の投稿でしたのでこちらにもアップします。


----------


先週は能登杜氏の講習会が台風の影響で中止になってしまいました。予定の空いたそのタイミングに以前コラボレーションさせていただいた水本アキラさん @akiramizumotoから、当時(2006年)の弊社の酒造り作業の様子を撮影したテープを発見したとの連絡をいただき、編集済の動画を眺めていました。

(動画は一般公開していませんので興味ある方はメッセージを送っていただければURLご案内いたします)


この時の蔵での撮影の体験が翌年リリースするコラボレーション酒"ZEN"のテーマである禅、然、善、全、膳…すべての"ゼン"を集約するイメージに繋がったと言えるでしょう。


数年前に能登杜氏の講習会で、"能登流"とは何か?という事がテーマにあがり、それ以来能登杜氏のアイデンティティーについて考えるようになりました。酒造技術以外の精神性も大きい要素で、北陸地方は禅を含む仏教哲学が浸透している土地柄、能登杜氏もその影響を受けているというのがここ数年強く感じている事です。


2006年の酒造期の酒蔵で撮影された映像からもその精神性を感じ取ることができ興味深いです。


能登の講習は勉強目的以外にも何か注入される感覚がありましたが、今年は動画が代替してくれました。ありがとうございました!



-----------



インスタに直接動画のリンクを貼らなかったのは、被っている帽子が本意ではなかったからですが…ご興味あればご覧ください。


https://youtu.be/4yvK-0hmxc8

posted by CHIYO at 11:42| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月17日

この時期

太平洋戦争における富山の大空襲から広島長崎原爆投下、終戦までのこの時期、ここ数年8月になるとなんだかソワソワしてきます。SNSで平和を訴えなければならないのではないかという気持ちがそうさせます。結局SNSではなくここに書いています。なんとなく抵抗があるのは、2024年の今は平和を訴える事が政治的であったり思想的であるとイメージさせるからかもしれません。


 戦争など起こるわけないがないと思っても、起こる事は理解できます。身近でも意味のわからない事が、全体主義、権威主義、官僚主義、ホモソーシャルでおこる事が簡単に想像できるからです。自由に生きたい自分としては全体主義は最も嫌なことのひとつです。


この時期NHK等で戦争の特集が多く放送されています。今も変わってないと感じる事がとても多いです。

posted by CHIYO at 11:15| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年05月23日

R5BY振り返り 3

地震から少し離れた振り返りです。昨年は米の収量が減るほどの猛暑で米が溶けにくい事が予想されていました。多少対策をしたつもりですがやはり米は溶けにくく粕が多くなりました。全体的にアルコールもあまり出ず酒質は良く言えば綺麗目という印象です。

お酒の味わい香りに関しては、長年欠点の改善に意識が向きがちでしたが、ここ最近はもう少し能動的に今年はこんな感じにしようみたいな方向に意識が向いています。

この酒は禅的なイメージで、長谷川等伯のような幽玄な水墨画のように…とかこっちの酒はイデア界に存在する誰もが想像するようなベーシックさを突き詰めた香味にしよう…とか。
つまりマイブームに左右される感じか…。
posted by CHIYO at 16:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 酒関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

R5BY振り返り 2

前回の引き続きになりそうです。地震が起きてからの酒造りも集中を切らさないように努めました。能登の被害の情報に触れつつも
酒造りで時間的にも精神的にも余裕が全くない状況や今後必要となってくるであろう自社の補修補強費用の事を考えると満足に支援ができないもどかしさを感じました。

私自身だいそれた支援みたいなものが得意ではなく、心もそこまで純粋ではありません。行動する前にあれやこれや考えてしまいます。イベントや企画等を通じて大きな支援ができる人はすごいなと思いました。結果にコミットするというのか、もしやこれがプラグマティズム的な考え方なのかとも思い、酒造りが終わったらプラグマティズムの入門書を1冊読んでみないといけないと思いました。

その状況でたまたま今期聴いていたポッドキャストの番組『ほうぼくチャンネル』では別の考え方に触れる事ができました。聖書の中のマタイによる福音書 6章3節 施しをする場合、右手のすることを左手に知らせるなという箇所です。

自分になじむ考え方は後者ですが色々な考えがあるのだと想像します。ところで震災後少し話題になったことで、弊社の立地する滑川市の水野市長が個人的にひっそり炊き出しに参加していたつもりが逆にSNSで大きく拡散され共感されたという事案がありました。なかなか興味深いです。
posted by CHIYO at 16:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 酒関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

R5BY 振り返り 1

酒造りが終わってあっという間に5月の連休が過ぎるというスピード感で、このままではまたすぐに秋が来て冬が来そうです。

R5BYの酒造りを振り返ると大きかったのが能登地方を震源とする地震です。様々な幸運が重なって仕込みの計画を変更せずに酒造りを続ける事ができました。地震絡みの話はまた別の機会に譲ろう…かと思っていましたが、今一番の優先事項としての蔵の修繕や補強が頭にあるためこの話題を続けたいと思います。

地震発生は1月1日の16時過ぎぐらいで、さすがに1月1日は洗米や仕込みはありませんでした。
それでも夕方に醪(もろみ)の櫂入れ、検温作業等がありますので蔵の足場の上で櫂入れしようとした瞬間に揺れはじめ、急いで蔵内の休憩室(2023年1月にリォームで設置したばかり)にダッシュで逃げ込みました。実はこの休憩室は以前風呂場があった場所ですが、その影響からか柱や床がシロアリや湿気でボロボロになっていてリフォームした際に修繕してありました。リフォームしていなかったら完全に崩れていたでしょう。

醪も末期のものばかりでナイロンカバーがしてありナイロンカバーに砂埃が堆積している状況でした。その仕込みタンクの並ぶ側の壁も以前は土壁でしたが、柱が腐ったかシロアリ被害かでボロボロの状態でしたが数年前に一部合板の壁に改修していた事も幸いでした。

特別純米を前日の12月31日に搾ろうか1日に搾ろうか迷って、1日にあまり仕事をしたくないので31日に搾った事も幸運でした。1日の午前には搾ったお酒の処理も済ませており助かりました。

お酒の移動のタイミングを考えていて、(年明けでいいかー)と作業を先送りにしていたのですが、移動先のタンクに小屋裏から樽が落下しナイロンカバーを破っている状態で、酒が入っていなくて良かったと怖くなりました。
このタンクがある蔵(仕込みタンクのある蔵とは別)が1番被害が大きく、土壁がそこそこ剥がれ、柱と壁が傾きました(一部の柱は4/100傾いています)それでも倒壊を免れたのはこの蔵と隣接する蔵(和釜、煙突のある)が鉄筋コンクリートの住宅と鉄骨の倉庫の間に挟まれて建っていたからかなと思います。

他にも細かな被害はありますが、能登の被害と比べるとしょうもなさ過ぎるくらいです。
それ故、支援等は今のところ受ける予定がなく被害が大きく苦しんでいるところに優先して回して欲しいと思っています。補助金という事であれば検討しなくもないのですが…ハードルは高そうです。また生産量が少ないため買って応援等されては困るというのが本音です。なかなかうまくいかないものです。

富山県は地震が少なくあまり対策を考えて来なかったのですが今回の地震を機会に多少の補強やメンテナンスの重要性を痛感させられました。しかしながら、弊社のある場所は液状化が起こる可能性がある場所で、地盤も基礎も良くなく、蔵も伝統工法で建てられていて完璧な耐震化は現実的ではなく、最低限の補修補強にとどめざるをえないように思います。
posted by CHIYO at 16:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 酒関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月24日

ふるさと納税について

ふるさと納税に関して制度が始まってから弊社からも商品の提供させていただいておりましたが、この夏で一旦提供を見合わせる事にいたしました。

ふるさと納税とは、住んでいる自治体以外の自治体に寄付をすると税金が控除される仕組みで、多くの場合寄付を受けた自治体から返礼品が受け取れます。

わざわざ寄付をしていただいた方へお礼として自治体が地元の特産品を送る、と聞くとごく自然な感じがします。また、新型コロナの影響で観光客が減った地方にとって助かるケースもあったかもしれません。弊社も僅かですがコロナ禍の時期に提供させていただいて、ご支援を受けているという気持ちと僅かながら貢献しているという思いでいました。

しかしながら、ふるさと納税を取り巻く環境が変化し自治体間の競争が加速し、拡大していく流れの中で弊社の商品の生産量や性質、販売環境等を考慮するとこのまま続ける事はできないと判断いたしました。

ふるさと納税は住んでいる自治体以外に寄付をする方が得な仕組みです。現在は寄付というよりお得という部分に注目が集まり弊害が出てきているようです。細かい説明は割愛しますが、今後制度の見直しがある予定で良い風になれば、と思います。

個人的には地方にある、または新しくできたまだ一般的に価値の定まっていないようなものが返礼品として用意され、寄付する側も損得関係なく面白さや応援的な感覚で選ぶみたいなのが良いのかなあ…と思います。


posted by CHIYO at 09:10| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月14日

特別純米

毎年夏にリリースする特別純米。毎年年末に発売している恵田を意識して造るお酒とし2021年誕生しました。恵田は年末にすぐに無くなってしまうので、飲めない方もたくさんおられるということで代替とは言えないまでも何か必要な感じがしていました。またお酒の販売が落ち着く夏場にひと山作りたいとうビジネス的な動機もあります。また恵田が好まれる理由にも興味があります。味なのか、デザインなのか、有機栽培米だからなのか、ストーリー性なのか、名前なのか笑。

味に関しては米の品種と酵母等を揃える事で多少近づける事はできます。また全く同じではなく寧ろ精米歩合を下げ(精白を高め)より香味の洗練を狙っています。

意外に労力を注いだのがデザインに関してです。恵田との繋がりを考え、恵田のデザインをされた宮田裕美詠さんにお願いしました。絵画使用のアイデアは早い段階で宮田さんから提案があったもののそこまでピンと来ないまま酒造りに入ったのですが、酒造り中に特別純米を造る事の意味や恵田との関係を考える中で、宮田さんと相談を重ねる内にやはり絵画での表現がベストという事になり、最終的に現在の形になりました。

抽象的なデザインですが、意図した部分もあります。ここで少し解説しようかと思いましたがやはり野暮な感じもしますのでやめておきます。自分は時間を経る内に新たな意味を付与したり発見したりして楽しんでいます。
posted by CHIYO at 11:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 酒関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年05月31日

恵田の田植えを終えて

今回は、というか今回もお酒の中身とはあまり関係のない読みにくいブログです。

先日恵田の田植えがありました。平成26年からやってくださっている前佛さんも自然なかたで淡々とあたりまえのように有機農業をされています。今年は有機栽培を続けるモチベーションというか欲求というか、そんな事を色々尋ねてみたのですが、様々な事をおっしゃってくださったのですが、こちらの勝手な解釈ながらも総合すると、彼にとって自然な事であるというか向いているというか、しかしそれはたぐいまれな素質である、と思いました。

自分としてはどうでしょう。恵田ついて一度じっくり自分の中で整理し言語化する必要を感じていました。

平成21年からスタートした恵田ですが、最初は酒屋さんのお客さんに米農家さんがおられて地元の米でお酒を造ってはどう??みたいな提案があった事がきっかけです。生産者がおられて販売もなんとかなりそう…興味が無いわけではないので好奇心みたいなもので始めても大丈夫そうなハードルの低さ(農薬をまったく使用しない事が決まったのは後になってから)、そしてビジネス的な打算もありました。

恵田に関しては取材もよく受けました。社会から期待される食の安心安全、地域活性化、自然環境保護等の類はメディアのコンテンツとして需要が高いからです。恵田はそうした社会的ニーズに対応した商品に映るのでしょう。また、そうした社会問題に挑む蔵元像も同様です。しかしこちらはあまりご期待に応えられず、自分としては食の安心安全や地域活性化、自然環境保護は目的ではなく(多少あったとしてもそれらを一義的に強く思っているわけではないため背負いたくない)、商品そのものの魅力(中身の品質やデザイン等)を重要視したいので、意識してそういう言葉を使用しないようにしたためコンテンツとしては消化不良となったかもしれません。
蔵元は聖人君子を期待される…と自分には勝手なイメージがあり、自分のこうした意識の低さ、俗人さが自分を長年モヤモヤさせ言語化したい理由につながっています。

前回のブログで紹介したフロムの『自由からの逃走』はひとつのヒントをくれました。ある時代の良心とされるものについての箇所を引用すると、

"人間が自分のものと信ずる願望や目的にしたがって行為するようにかりたてるが、その願望や目的は、じつは外部の社会的要求の内在化したものである"

とあります。自分は社会的要求の内在化に対し意識的に抵抗している部分もあるのかと思いました。そして自分自身が自発的に欲している事を認識するのは案外難しい事だと感じます。もしかすると無意識的にあたりまえと感じている事をアピールする事に抵抗感があるのかもしれません。

今読んでいるのは鈴木大拙の『禅と日本文化』ですがまた何かヒントを得られそうな気がします。
posted by CHIYO at 17:33| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月20日

令和4酒造年度の酒造りを終えて

令和4酒造年度の酒造りを薄く振り返ります。今年のお酒に良い評価をくださる方が多い一方で、自分はまだ半信半疑です。しかし、あまり利き酒には自信がないのでその評価は正しいのでしょう。自分としては昨年の方が良い(好み)ものもある感想です。

好みというのは難しくて、豊かに満たされたものを好む人もいれば、どこか欠けたものに美を感じる人もいます。さらに現在の日本酒業界はより多様で相対主義的なポストモダン??の様相です。自社のお酒をどうしたら良いのか、アイテムによって、年度によって、流行も多少踏まえつつ抗いつつという感じでしょうか。。

さて今年もポッドキャストを聞きながら酒造りをしていたわけですが、今年は週2日読書する時間を確保し本を読む事に挑戦しました。夜の麹の温度を待つ時間等をその時間にあてるのですがなかなか良かったです。今年はエーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』を選びました。自由や抑圧に対して分析した内容は自分好みのテーマであり、ナチスドイツの時代にユダヤ系の著者によって書かれた本書は、こもって読むのに最適でした。
posted by CHIYO at 11:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 酒関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月22日

関心事

毎年この時期は大空襲、2度の原爆、敗戦と戦争を考える時期ですが、近頃は一年中戦争の事が頭にある気がします。終わりよけばすべてよし、結果オーライという言葉がありますが、目的の為の手段がちゃんとしたものでないと長期的に見て何か腐っていくような気がします。最近の元首相暗殺を発端とした一連の疑惑もそんな感じです。最も行くところまで行くと手段は限定されてしまうのでしょうか。

話は変わりますが今年は松本清張没後30年だそうです。昨年から少しずつ読んでいる本が偶然にも松本清張の晩年の作品『神々の乱心』でなんだかタイムリーです。読み終えたら遠藤周作『深い河』、その後は鈴木大拙辺りにいこうかと思っています。(鈴木大拙が流行っているので先にしようか、まあどうでもいいですが。)共通しているのは新興宗教、キリスト教、仏教…と、宗教に関わりがある事です。意識したつもりはないのですが関心があるのだと思います。自分が関心を持った事が世間的にも関心を持つ人が増えている事であるのはよくあることです。

今までは戦争と宗教に関して個々人が考えなくても良いようにこれたのですが、考えないといけなくなる時期が近づいているのかと感じます。
posted by CHIYO at 15:22| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする